すり身物語

900年近い歴史をもつ蒲鉾。これから先の世代にも伝え続けていくことのできる日本人の味。「すり身」のあれこれをご紹介いたします。

  • はじまりは「すり身」
    「すり身」は太古の昔から日本に限らず、中国や東南アジアなどでも古くから食べられていたようです。縄文時代の貝塚や土器の中に、「すり身料理」を作っていた痕跡を見ることができます。そのころは土器の中に魚を放り込み、海水や塩を加えてつぶすという原始的な作り方でした。
  • いよいよ「蒲鉾」
    類聚雑要抄 「かまぼこ」

    ▲ 類聚雑要抄「かまぼこ」(東京国立博物館蔵)

    「すり身」が蒲鉾というかたちの加工品となって食べられるようになったのは、弥生時代の中ごろでしょうか。蒲鉾の云われには諸説ありますが、神功皇后が三韓渡航[200年]の途中に神戸の生田神社で鉾の先にすり身を塗りつけて焼いたものが最初であるといわれています。また、室町時代中期に写本された巻物、類聚雑要抄(るいじょうぞうようしょう)という平安時代の文献(永久3年[1115年])に、初めて蒲鉾が紹介されています。七月廿一日戌子、関白右大臣、東三條へ移御の時の高坏に蒲鉾が載っています。祝宴の献立が数多く記されている同書には、しばしば蒲鉾の名が登場します。最初は鯰や鯉などの淡水魚を使っており、その後鯛、エイ、鱧等の海産魚で作られるようになりました。

  • 「蒲鉾」という名の由来
    蒲の穂「蒲鉾」という名の由来諸説あります。室町時代の文献、宗五大双紙(享禄元年[1528年])に「かまぼこは、なまず本也。蒲の穂を似せるもの也。」とあり、形相のよくないナマズをすり身にして、竹に塗りつけ蒲の穂に似せて作ったものを、蒲の穂が鉾に似ているので蒲鉾となった説や、鉾の先にすり身を塗りつけて焼いた様子が、水辺に生える蒲の穂に似ていたので、「蒲穂子」(か まほこ)と呼ばれ、しだいに訛って蒲鉾となった説などがあります。
  • 「練り物」の種類
    「すり身」の加工品は「練り物」とも呼ばれています。蒲鉾に代表される「練り物」には、調理方法や材料によってさまざまな種類があります。 

    【蒲 鉾】 「蒸す」一般的に蒲鉾といわれているのが板付き蒲鉾。関東に多い腰高の蒸し蒲鉾、関西の比較的小ぶりな蒸し焼き蒲鉾。板を使わずに蒸した昆布巻き蒲鉾、す巻き蒲鉾などがあります。
    (はんぺん)「ゆでる」白身魚のすり身に山芋や卵白を加えてゆでて作ります。しんじょ、つみれ、なると巻きなどが仲間です。
    【ちくわ】 「焼く」蒲鉾のルーツであるちくわは、串にすり身を巻きつけ焼き上げたものです。生ちくわとおでんや煮物に使われる焼きちくわがあります。生ちくわの中には豆ちくわ、豊橋ちくわ、豆腐ちくわなどが、焼きちくわの中にはボタンちくわや皮ちくわなどが焼きちくわなどは挙げられます。
    【さつま揚げ】 「揚げる」魚のすり身をそのまま揚げることで、旨みと栄養を逃がさないさつま揚げは、全国各地で生産され、その量も練り製品の中では群を抜いています。

  • さつま揚げのルーツ
    全国的に生産量の多い「さつま揚げ」のルーツにも触れてみましょう。「さつま揚げ」のルーツは琉球(沖縄)。中国文化の影響を多大に受けた琉球では、料理もその例外ではありませんでした。魚のすり身にでんぷんを加えて混ぜ合わせ、それを油で揚げた「チキアギ」という料理もその一つでした。今から150年ほど前に「チキアギ」が、薩摩(鹿児島)の串木野に伝わりました。薩摩では「チキアギ」を「つけ揚げ」と呼ぶようになったそうです。それが全国に広まるうちに関東では「さつま揚げ」、関西では「てんぷら」と呼ばれるようになりました。
  • 地方色豊かな「練り物」
    日本中で作られる練り物。その土地によって特色あるものが作られています。その一部をご紹介しましょう。 

    笹かまぼこ 仙台名産で有名な笹かまぼこ。現在では塩釜、石巻、気仙沼などでも生産されています。笹の形に成型したすり身を竹串にさして焼いたものです。
    はべん 富山県で作られる蒲鉾の総称で、巻きずしのように、すり身を板状に延ばし、それを巻きあげて作られます。昆布巻、赤巻などがあります。
    鳴門巻き 断面が渦巻きに見えることから、鳴門海峡の渦潮にちなんで命名された鳴門巻き。現在では静岡県の焼津で、そのほとんどが生産されています。
    じゃこ天 近海の雑魚(じゃこ)をすり身にして揚げたもので、皮てんぷらやてんぷらなどといわれ、日本各地の漁港近くで郷土のじゃこ天が生産されています。中でも愛媛県南予地方のものが有名です。
    おびてん
    飫肥天
    宮崎県日南市の郷土料理で、イワシ、アジ、シイラ、トビウオなどをすり身にして豆腐を混ぜて、味噌、醤油、黒糖などで味付けをして揚げたもの。さつま揚げに似ているが、弾力が少なくふんわりした食感で、甘いのが特徴です。
    伊達巻 白身のすり身に卵を加え、砂糖やみりんで味付けして焼き上げたものを、熱いうちに巻きすで卵焼きのように形を整えたもの。長崎ではカステラ蒲鉾とも呼ばれています。
    黒はんぺん これも静岡県焼津市の名産で、イワシやアジ、サバなどを骨ごとすり身にして茹でたもの。静岡県内では白いはんぺんよりも黒はんぺんを「はんぺん」と呼ぶほど一般的です。
    カニカマ カニ風味かまぼこ。1970年の半ばに大ヒットし、以来アメリカやヨーロッパにも多く広まった色や形、食感を蟹の身に似せて作られる蒲鉾です。広島県の水産加工メーカーが作ったものが、一般的に広まっています。

  • ヘルシーな「すり身料理」
    健康的なダイエットや筋力アップには低脂肪・良質タンパク質。肝臓の働きを高める良質タンパク質。老化や生活習慣病を防ぐDHAやEPA。カルシウムや鉄分、ビタミンBも豊富。バランスの良い日本型食生活が欧米で注目されている近年、「すり身」は世界中へ羽ばたいていきます。
  
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